US永住権(グリーンカード)取得について

先月、申請していたUS永住権、いわゆるグリーンカードを受領しました。私のような純日本人がグリーンカードを取得する方法はいくつかありますが、よくあるパターンは

  1. 配偶者がアメリカ人
  2. Diversity Immigrants Visa Program (抽選による移民ビザ発給) に応募して当たる
  3. 大企業に勤めていて、会社にサポートしてもらう
  4. USに規定の投資($50万ド ル以上。2019年11月から90万ドル以上)して取得

です。私のように、従業員が8人(グリーンカード申請時)しかいないような小さな会社のケースは、ググってもあまりないようなので、参考になればと思い、申請プロセスをまとめておきます。

基本情報

申請時会社規模

  • 従業員8名
  • 売上$2M
  • 利益$200k

筆者のステータス

  • ポジション: CEO
  • ビザ: L1A
  • 家族あり

申請カテゴリー

まずグリーンカードを申請するカテゴリーを選びます。私の場合、選択肢は2つでした。

  • EB1-3 (Multinational manager or executive): 企業の役員もしくは管理職で、アメリカ国外の関連会社に過去3年のうち1年以上役員もしくは管理職として雇用されている者
  • EB2 (Advanced Degree): 専門家を対象としたもので、科学、芸術、ビジネス等のいずれかにおいて特殊な能力を持つ者

他に、EB1-2 (Outstanding Researcher or Professor)カテゴリーでの提出も考えましたが、私は博士号を持っているものの、現在の業務とはあまり関係がない(宇宙物理学)し、卒業後のComputer Science 分野での論文は数えるほどしかないので、無理だと判断しました。

EB2は、審査プロセスが3段階

  • PERM (申請する人物が他と代替不可能な人材であることの証明)
  • I-140 (グリーンカードの資格申請そのもの)
  • I-485(現在の労働ビザからI-140で許可された永住権への変更手続き)

それに対して、EB1 の場合は最初のPERM プロセスをすっ飛ばしてI-140 からスタートできます。申請準備を始めた際に、私はL1A VISAを持っていて、その期限が1年3ヶ月後に迫っていました。
もし期限の前にグリーンカードが取得できれば、L1Aの延長にかかる費用を浮かすことができます。参考までに、ビザプロセスのガントチャートと、それぞれの申請でかかる費用をまとめました(下図)。この費用は弁護士費用込みなので、依頼する弁護士によってはもっと高いことも、安いこともありえます。

しかし、ここで会社のサイズが問題になりました。弁護士によれば、EB1 (Multinational manager) の申請において、USCIS (アメリカ移民局)から部下の数についての明確な基準は示されてはいないが、10 – 15 ぐらいのヘッドカウントがあることが望ましいそうです。SONYさんとか、Hitachi さんとか、日本の大企業の駐在員からGreen Card を取得されているような方は、配下の部下の数は15人以上いたり、いなかったとしても申請時の組織図はいかようにでもいじれるので問題ないのでしょう。

私の場合、CEOにして配下の従業員は当時8名しかいませんでしたので、Reject の可能性もありうる、とのことでした。弁護士からはEB2 も同時に申請して、並行で進めることも提案されましたが、流石に費用がかかりすぎるし、最悪L1Aビザを延長すれば、もう二年はUSにいられるので、まずはEB1-3 で申請することにしました。その時は、まさか申請期間がこのガントチャートの3倍になるとは、思いもしませんでしたが。。。

グリーンカード申請ガントチャート
グリーンカード申請ガントチャート

実際のタイムライン

実際の申請プロセスがどのように進んでいったかは、以下のとおりです。

I-140

  • 2016年4月: 全書類完成。USCIS へsubmit
  • 2017年1月: ドナルドトランプ大統領就任。ビザ発給プロセスが複雑・長期化する方向に。
  • 2017年9月: 追加資料のリクエスト。会社の最新の財務状況の資料を求められる

ここで、USCIS からDunn & Bradstreet Number (通称、D&B Number)を求められたのには驚きました。D&B は日本で言えば帝国データバンクのようなところで、上場・非上場問わず、USの企業の財務状況をモニタリングしている民間企業です。帝国データバンクと同様、新しい企業と取引開始する際の与信審査で使う、というところが主な利用シーンなのですが、Startup でまともにD&Bのデータを整備している人に会ったことがあまりない、というのが正直なところです。自主的に自社の財務諸表をUpload するのは無料の範囲でできますが、一度Upload すると、すかさず営業から電話がかかってきて、「D&B スコアをもっと良くするためのコンサル」を提案してきます。他社情報を取得するにも結構なお値段かかるので、D&Bにいい印象を持っている人は少ないのでは。。。
とはいえUSCISからD&B ナンバーを求められてしまったので、あわてて「無料の範囲内で」データを最新に更新しました。

  • 2017年10月: I-140 受理される

I-485

  • 2017年11月: 健康診断を受け、診断書類作成

健康診断では、予防接種の有無を問われます。麻疹、風疹、おたふく風邪などが対象ですが、発病または予防接種取得済み、という証明を提出する必要があります。書類集めの方が面倒だし、それぞれの免疫があるかどうかを調べるのにもコストがかかるので、素直に全ワクチン打ちました。。。ただ、日本で風疹が流行していて、その理由が今の40代の成人が子供の時に受けるべきワクチンの数が少なかったためということで、ここで一発打っておいて、逆に良かったかもしれません。

  • 2018年1月: 移民弁護士が提出書類を作成している間に健康診断書のフォームがUpdateされてしまい、書類作成やり直し
  • 2018年1月: I-485 submit
  • 2018年2月: I-485 AOS Biometrics appointment (指紋採取)
  • 2018年6月: USCIS 審査官とのインタビュー

トランプ政権後、インタビューも厳しくなったということで、移民弁護士がインタビューに同行してくれました。それまではインタビューにわざわざ同席はなかったらしい。質問は、記載事項に虚偽が無いかの確認。重要な数字は書類を見ずに答えることが求められます。家族の誕生日や、前の自宅の住所とか。緊張はしましたが、特に問題なく終了。知人にはこのインタビューさえ終われば、グリーンカード交付はすぐと聞いていたので、まさかその後1年も待たされるとは思っていなかった。。。

  • 2019年4月: 健康診断書がExpire (期限1年) しているため、再々度取り直し。。。
  • 2019年6月: グリーンカード受理

ということで、結局準備から3年と3ヶ月かかりました。予想の3倍です。私のL1A の延長は2017年7月が二度目の延長で、気がつけば次の期限が2019年8月。L1Aは、延長は2度までしかできないので、危うくビザ難民になるところでした。無事に発給されて本当によかった。

申請中の海外出張について

私は、当時の会社の営業面を全面的に負っていたこともあり、ビザ申請期間中でも海外出張しないわけにはいかない状況でした。弁護士にもこの点に関しては何度も確認しましたが、少なくともL1A -> EB1-3 のトランスファーにおいては、申請期間中に海外旅行を制限されることはありませんでした。旅行中の出入国はL1A を使い、特に問題になることはありませんでした。

ただ、ひょっとすると、申請期間中に頻繁に海外出張していたため、プロセスが遅れたのかな、、、という気もしています。真相はわかりませんが。

その他のアドバイス

移民弁護士の選定は慎重にしましょう。少なくとも3人以上の異なる移民弁護士と話をすることをオススメします。弁護士によって言うことが全然違うことに驚くと思います。おそらく大企業の場合は、過不足ない書類さえ提出すれば、結果が異なることはほとんど無いと思いますが、小さな会社の場合、書類作成において弁護士の技量によるところが大きい、ということの証左なのかもしれません。

そういった小さな企業のケースをよく取り扱っているか、聞いてもいいかもしれませんね。もしうちの契約している弁護士事務所を知りたいという希望がありましたら、コンタクトください。喜んでご紹介します。

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