会計ツールの紹介

2019年7月現在、カリフォルニア州の最低賃金は時給$12です。どんな職業の方であっても、時給で働いている従業員に対してはこの金額を給与として支払う必要があります。都市によっては、州とは異なる基準を設けているところもあり、例えば San Francisco の最低賃金は$15.59 になります。

“Exempt Employee” と呼ばれる、時給で働かない、クリエイティブ職やマネージャー職に適用される従業員に関しても、最低年収(Minimum annual salary) が決まっています。特にカリフォリニア州では、職種毎に最低年収が違うので注意が必要です。”Computer Software employee” の場合、最低年収は$94,603.25 です^1。これ、ボーナスを除く年収です。しかも、最低 年収ですから、当然この額ではなかなかいいエンジニアは来てくれません。経営者にとっては厳しいかぎりです。。。

前置きが長くなりましたが、このように人件費が高騰しているカリフォルニアでは、なるべく業務を効率化することが必要です。つまり人間がやらなくていいことをなるべくやらずにすむように、ツールや外部サービスを導入することになります。うちの業務効率がどのぐらい良いかは正直わかりませんが、なにかの参考になればと思い、使っているツール・サービスを以下に紹介します。もし、この他に良さげなツール・サービスを知っていたら、是非教えていただきたいです。

帳簿(会計ソフトウェア)

USでは、Quick Books か、Sage(ちょっと前はPeachtreeという名前だった) が2大会計ソフトウエアです。どちらもPCにインストールして動かす普通のWindows アプリだったのですが、時代の要請から両者ともにクラウド版を出しています。クラウドの世界では、これら2大会計ソフト以外にも、Xero というクラウド専門のソフトウェアがシェアを伸ばしてきて存在感を放っています。

うちは、設立当初はSage のローカル版、その後、QuickBooks のOnline版 に乗り換えました。とりあえずQB かSage にしておけば、多くの会計事務所がこれら2つのいずれかのデータに対応してくれるので、レビューをお願いする際の会計オフィスの選択肢が広がります。QB、Sage、どちらにするかは、 それぞれ良い面・悪い面あるので難しいですが、私はQBの方がUI/UX が好きです。Sage はUIに昭和臭がする。。

ローカルか、オンラインか、という選択に関しては、今からならオンライン版一択でしょう。オンラインで管理しておけば、データはいつも最新の状態でステークホルダー全員に共有されます。データの管理や、Import/Export などの無駄な作業が一切なくなります。また、各種銀行やクレジットカード情報、下記に述べる経費精算サービスなど、外部ツールと簡単に接続できるのもオンライン版の強みです。ユーザー数や機能によって値段が異なりますが、うちが使っているプラン(Plus) では、US$9.30/month です。

トップページのダッシュボードはカスタマイズ可能です。ただ、会計ソフトウェアにログインする場合って、すぐに目的の情報にドリルダウンしたいので、俯瞰した情報ってあまり必要ないですけどね。

QB のトップ画面。https://quickbooks.intuit.com/ から引用
QB のトップ画面。https://quickbooks.intuit.com/ から引用

購買

従業員の経費による物品購入は、できるかぎりAmazon Business にまとめています。従業員全員にAmazon Business アカウントを付与して、その中で承認者を数名決めています。
Business アカウントの開設に費用はかかりません。Business アカウントにも有料のPrime サービスがありますが、うちは購入していないです。中途半端なビジネスサイズのため、ちょっと割高なんです。。Primeは、100 user までのMEDIUMサイズで、$1,299/年 になります。

使い方ですが、ビジネスアカウントで各従業員が通常のAmazon ショッピングをします。
Check out の際に承認者にメールが飛びますので、承認者は内容を確認して、Reject かApprove かを決めるだけです。
承認リクエストを出す際に、メッセージを書くこともできます。承認者毎に、承認できる額の上限や、承認できる物品の種別など、Policy を細かく設定することもできます。

Amazon Business の支払いは、すべてコーポレートクレジットに紐づけています。コーポレートクレジットカード自体もQuickBooks と連動しているので、一切手動で入力することなく、帳簿記載まで済んでしまいます。また、Business Notifications Panelという、「次回のデリバリーがいつか」とか、「今月チームでいくら使った」とか、基本情報をさっと閲覧できるようなパネルがあり、地味に便利です。

もちろん、出張先での物品購入や、接待費用など、Amazonではカバーできない経費処理があります。そちらについては以下で述べます。

経費精算

Amazon 以外で従業員が何らかの支払いをする際は、いわゆる立替金払いをお願いしています。従業員が個人で支払った会社経費に関しては、給与支払い時に返金(Reimborse) しています。この際に、会社で決まったフォームやシステムに申請登録し、レシートや領収書を提出すると思いますが、うちはExpensify というサービスを利用しています。

Expensify は、UI/UX 的にかなり気持ちがいいツールです。一点だけ不満はテクニカルサポートで、チャットのみ、かつレスポンスが遅いので、困った時にもどかしい気持ちになることがあります。。。

使い方ですが、まずExpensify のスマホアプリを起動し、申請するレシートをカメラで撮影します。撮影された画像はOCRにかけられて、日付、品目、金額、大まかな勘定科目、などが自動で読み取られて、自動的にExpense データが作成されます。あとは、それらのExpense データを、ひとまとめの”Report” にして(Reportも、自動で作られるように設定することもできます)Submit ボタンを押すだけです。Submit ボタンが押されると、承認者にレポートが送られて、承認・差し戻し、を判定します。承認された場合は、承認額が給与支払いシートに入力されます。現状ではそこだけ、マニュアルですね(給与支払い自体は、ADPというサービスを使っていて、そこは自動化されています)。

コーポレートクレジットカードで経費を支払った場合は、更に強力です。クレジットカード会社のオンラインサービスと連携できるので、なにもしなくとも自動的にReport が生成されます。普通はエビデンスとしてレシートのUpload が必要になると思いますが、それすらも、支払先の素性が明らかな場合(例えば、Amazon などのEコマースサイトや、一部のレストランなど)、Expensify Guarranteed eReceipt というレシートが自動で生成・添付されて、実際のレシートの代わりとして機能します。社内ポリシーで「実際のレシート必須」であればしょうがないですが、このeReceiptも、税務上はまったく問題ないレシートになります。さらに地味に便利な機能は、Uber やLyft との連携。トリップの終了と同時に、Expensify にレシートや経路情報が自動で送信されるため、これも入力要らずです。Uber, Lyft をよく使う方であれば、めちゃ便利。

気になるお値段は、”Collect” というプランで $5/user/month です。上記のコーポレートクレジットカードとの連携をEnjoy するためには、”Control” というプランが必要で、そちらは$9/user/month です。

レシートのキャプチャ画面。https://www.techbout.com/expensify-app-review-3331/より。
レシートのキャプチャ画面。https://www.techbout.com/expensify-app-review-3331/より。

コーポレートクレジットカード

今まで何度か出てきたコーポレートクレジットカードですが、契約の際には表向きのベネフィトの他にも、カード会社によってWeb テクノロジーに差があるので注意したいところです。

ネガティブなコメントになってしまうので会社名は伏せますが、私が当初使っていたコーポレートクレジットカードは、オンライン技術の面でレベルが低く、今は全く使っていません。代わりに、現在の主力はChase 系のカードです。プライベートでは、Citi Bank 系も使っていますが、いわゆるUS大手の銀行・金融機関が発行するクレジットカードであれば、UI/UXや外部連携の面で不都合が生じることは無いでしょう(と、ここまで書いてしまうと、うちの最初のカードがどこから発行されたものか、バレそうですがw)。

前述のとおり、コーポレートクレジットカードの支払いは、Expensify 経由で自動で帳簿に取り込まれます。

その他支払い

上記と銀行間送金(Bank wire transfer) で、ほとんどの経費支払いはカバーされますが、それでもやはり、小切手(Check) でのやり取りが発生する場合があります。それも自動化したいので、うちではBill.com というサービスを使っています。

小切手で支払いをやろうとすると、物理的なプリントアウトやそこそこ上位の人(CFO やCEO)のサインが必要になって大変です。Bill.com を使えば、それらをすべて代行してくれます。ユーザーは、支払先情報や金額を入力し、然るべき承認者に承認ボタンを押してもらうだけで、物理的な小切手が先方に届きます。

Qucik books との連携ももちろん可能で、Bill.comでのトランザクションは自動的に帳簿に取り込まれます。うちが使っているプランは”TEAM” というもので、$49 user/month です。