アメリカでの就労ビザの現状(2020)
私も刻々と変化する状況にキャッチアップしていくのが大変ですが、2020年7月末のアメリカにおける就労ビザの現状について簡単にまとめようと思います。お約束のDisclaimer ですが、私は専門家ではありませんので本記事はあくまでも参考程度とお考え下さい。正確な情報が必要な場合には、必ず移民弁護士にコンタクトして下さい。また、留学を考えている学生さんも大変な状況だと思いますが、学生ビザに関しては私は全く知識がないのでごめんなさい。。。
就労ビザの種類
まず、日本人を含め、外国籍の方がアメリカで合法的に働いて給与を得るには「就労ビザ」が必要です。主要なものとしては、
- L-1A, L-1B:
日本本社からUS子会社への転勤者、いわゆる駐在員向けのビザです。L-1A は管理職向けビザ、L-1Bは専門職(エンジニアやマーケターなど)向けビザです。L-1A の場合、最初は3年、その後2年の延長が2回できますので、3 + 2 + 2 = 計7年滞在できます。ただし、会社の規模が小さかったり、US子会社の設立が新しすぎたりすると最初の有効期限は1年しか認められないことがあります。 - E-1, E-2:
投資家ビザと呼ばれているものです。E-1 は貿易を主たるビジネスとしている方向け、E-2 は米国内における企業への投資を行う方向け、となっています。ただし、E-2の方は投資業務に限ったビザではなく、日本からの出資で設立されたUS子会社への転籍であれば開発やマーケティングなどの通常業務もできます。Lビザより有効期限が長く(5年)、更新も無制限で自由度が高いためか、最近私が知り合う駐在員の方はE-2 をお持ちの方が多いようです。 - H1-B:
特殊技能者向けのビザです。エンジニアや会計士、弁護士などのスペシャリストが取得します。L やE と異なり、個人が評価されて個人に付与されるビザなので、アメリカ国内での転職が自由にできます(逆に言えば、L やE は転職できません)。年間の発行数の上限が85,000件と決まっており、2014年以降は応募多数のため毎年抽選になっています。
他には、Oビザをお持ちの方に何度かお会いしたことがあります。Oビザは著名なスポーツ選手や科学者などの「卓越した能力を有する」方向けのビザです。ノーベル賞級でないと取れないビザだと思っていましたが、「そこそこすごい」ぐらいでも取れるとのことです(その方がご謙遜されているだけかもしれません)。
また、上記のビザは「非移民ビザ」と呼ばれるもので、あくまでも米国滞在は一時的なものであり、いつかは本国に帰るものとみなされます。アメリカに永住するためのビザは「移民ビザ」で、いわゆるグリーンカードがそれにあたります。
コロナ禍での大統領令
前置きがながくなりましたが、コロナ禍で発令された移民に影響のある大統領令(Presidential Proclamations) について、時系列で並べると以下のとおりです。
- 1/31/2020 中国への渡航禁止
- 2/29/2020 イランへの渡航禁止
- 3/11/2020 ヨーロッパ(Schengen エリア)への渡航禁止
- 3/13/2020 UK, アイルランドへの渡航禁止
- 3/20/2020 全てのビザプロセス業務の停止
- 3/21/2020 メキシコとカナダの陸地の国境の閉鎖
- 4/22/2020 移民ビザ(いわゆるグリーンカード) プロセス業務の停止
- 5/24/2020 ブラジルへの渡航禁止
- 6/22/2020 H-1B, H-2B, L-1, J-1 保持者の入国禁止
これにより、今年に入ってビザを更新する予定だった方や、ビザ発給を待っている方に多大な影響がでています。特に6月22日に発令されたH, L, J の入国禁止の影響は大きく、様々な議論が巻き起こっているのはご存知のとおりです。大統領令の差し止めを巡って裁判になることは間違いないのではないかと思います。
対応策と今後
まず、現在アメリカにいる方であれば、アメリカ国外に出なければ何も問題はありません。たとえ就労ビザの期限が切れていたとしても、I-94 と呼ばれる滞在許可証の期限が切れていなければ、合法的にアメリカに滞在し給与を得ることができます。ただし、ビザが切れた状態で一旦アメリカ国外に出てしまうと当然ながら戻ってこれなくなってしまいますので気をつけましょう。I-94 の延長申請は米国移民局(USCIS) へ郵送で行うことができます。
アメリカ国外にいたとしても、6/24日までにH-1B, H-2B, L-1, J-1ビザの発給をうけていて有効期限内であれば、この入国禁止令の対象にはなりません。また、それ以外のビザ(EやOなど)の所持者にも影響はありません。
7/25日現在、面接などを伴わない一部のビザ申請業務や延長業務は再開しています。今後、面接なども再開されることと思いますが、米国移民局が予算不足のため、13,400人の従業員を一時解雇という気になるニュースが入ってきました。。。予算不足の理由として、コロナ禍で申請業務が止まり、申請料の徴収ができなかったためとしていますが、これにより更に処理プロセスが長引いてしまう可能性もあるため、まだまだ予断を許さない状況ですね。
私の周りでも、ビザ取得の先行き不透明感から日本への本帰国を決断される方が増えてきたように感じています。アメリカ国内でコロナ感染者数が急増しているのもその一因でしょう。ビジネスも生活も大変な状況ですが、不確実性が極端に高まった今こそ、イノベーションに取り組むべき時です。頑張っていきましょう!